【エヴァ】なぜ人類補完計画は破綻したのか?徹底考察

なぜ人類補完計画は破綻したのか

渚カヲル

この時点で、エヴァシリーズは8体まで揃いつつあり、残りは4体となります。そして、ゲンドウの裏切りを確信したゼーレは、第17使徒「タブリス」、つまり、渚カヲルを使い、予定よりも早く、人類補完計画を実行しようと試みます。


ゼーレ:エヴァンゲリオン、すでに八体まで用意されつつある。

ゼーレ:残るは後四体か。

キール:第3新東京市の消滅は、計画を進める良き材料になる。

キール:完成を急がせろ。

キール:約束の時は、その日となる。


ロンギヌスの槍が利用不可能になったことで、当初の予定であった、ロンギヌスの槍、リリス、渚カヲル、あるいはダミーシステムを使った、ゼーレのシナリオによる人類補完計画は不可能になりました。

そこで、ゼーレは予定を変更し、渚カヲルを直接ネルフに送り込むことで、カヲルをネルフ本部地下に眠るリリスと融合させ、渚カヲルのナビゲーションによって、サードインパクトを引き起こし、ゼーレによる人類補完計画を強制実行しようとしました。

ゲンドウが「老人は予定を一つ繰り上げるつもりだ、我々の手で」と言っているのは、裏死海文書で予言されていた、15体目の使徒の襲撃をゼーレが使徒であるカヲルを送り込んだことで、人為的に生み出したためです。


冬月 「まさかゼーレが直接送り込んでくるとはな」

碇  「老人は予定を一つ繰り上げるつもりだ、我々の手で」


サルベージの際には、他者を求めたシンジでしたが、ミサトは加持の死によって、部屋から出なくなり、アスカもいなくなり、クラスメイトは疎開してしまい、シンジはどんどん孤独になっていきます。そして、クローンの秘密を知ってしまったことで、綾波レイにも話しかけることが難しくなっています。

また、トウジのことや、リツコから母親やレイのことを聞いたシンジは、ゲンドウも信用できなくなっていました。

誰にも相談できず、自分がどうすべきかわからない。そんな状態でフィフスチルドレンである渚カヲルがシンジの前に現れます。


SEELE:偽りの継承者である黒き月よりの我ら人類の始祖たるリリス、そして、正当な継承者たる失われた白き月よりの使徒、その始祖たるアダム。そのサルベージされた魂は君の中にしかない。だが、再生された肉体はすでにアダムの中にある。


カヲルはシンジに興味を持ち、シンジに接触します。そして、カヲルとシンジは親密な関係になり、カヲルはシンジのことが好きだと告白します。

他人から「好き」と言われたことは、シンジにとっては初めての体験です。(後でミサトに話している)

これまで、シンジが恋をしていたのはゲンドウでしたが、真実に向き合い、また、自立に向かうことで、父離れを始めていました。そして、孤独の中で現れたカヲルに、シンジは恋を寄せ始めます。相思相愛になる二人ですが、カヲルはゼーレに与えられた使命を果たすために、地下のリリスに向かいます。ただし、カヲルは地下に眠っているのはアダムだと聞かされており、自分の本来の体に戻るものだと思っています。


カヲル:アダム…われらの母たる存在…アダムより生まれしものはアダムに還らねばならないのか?人を滅ぼしてまで…

カヲル:違う…これは…リリス!そうか、そういうことかリリン!


ゼーレとしては、渚カヲルが、地下に眠る肉体がリリスであることに気づいたとしても、アダムとリリスの肉体は基本的に同じものであり、カヲルはゼーレから与えられた使命に従い、安息の死を求めて、同化を行うと考えていました。しかし、予想に反し、碇シンジに心酔してしまっていた渚カヲルは、リリスとの同化よりも、シンジのために、シンジに殺されることを選びます。そして、渚カヲルによって、ゼーレの計画は阻止されてしまいます。

カヲルは、生への執着を始める前の綾波レイと同じように、死ぬことによって開放されることを願っていました。しかし、シンジと出会ったことにより、生への執着が生まれてしまったのです。そして、シンジに生きていて欲しいと思うようになり、ゼーレに反発し、シンジを生かすために自ら死を選んだのです。カヲルは初号機に握りつぶされ、肉体はL.C.Lになりました。


シンジ:カヲル君…どうして…

カヲル:僕が生き続けることが僕の運命だからだよ。結果、人が滅びてもね。

カヲル:だが、このまま死ぬこともできる。生と死は等価値なんだ、僕にとってはね。

カヲル:自らの死、それが唯一の絶対的自由なんだよ。

シンジ:何を…カヲル君…君が何を言っているのか分かんないよ!カヲル君!

カヲル:遺言だよ。

カヲル:さあ、僕を消してくれ。そうしなければ君らが消えることになる。滅びの時を免れ、未来を与えられる生命体は一つしか選ばれないんだ。

カヲル:そして、君は死すべき存在ではない。

シンジ:…

カヲル:君たちには未来が必要だ。

カヲル:ありがとう。君に逢えて、嬉しかったよ。

シンジ:…

人類補完計画

ロンギヌスの槍を失い、カヲルによる強制的な補完計画にも失敗したゼーレは、直接、初号機の奪取に乗り出します。神に等しき存在となった初号機を使うことで、リリスやロンギヌスの槍を使わずに、補完を実行することが目的です。なぜ初号機であれば、ロンギヌスの槍が必要ないのかという点について、真相は明らかではありませんが、アダムやリリスの場合、人がアダムやリリスの意思をコントロールすることができないため、アンチATフィールドを展開させるためには、カヲルやレイのようなナビゲーターの意思によって発動させるか、あるいは、デストルドーそのものであるロンギヌスの槍を突き刺すことで、アンチATフィールドを強制展開させる必要があると考えられます。(注:魂のないリリスに槍をさしてもアンチATフィールドは起こらない)ナビゲーターであるカヲルは、既にゼーレを裏切っており、再びカヲルの魂を受肉したとしても、シンジのいる世界を求める可能性が高いため、信用できません。つまり、ロンギヌスの槍以外にアンチATフィールドは発動できないということになります。

一方、エヴァ初号機の場合、元々、人が操作するために設計されており、デストルドー(死の欲動)で満たされたパイロットがいれば、アンチATフィールドを展開させることができるため、ロンギヌスの槍が必要ないのではないかと考えられます。


SEELE「約束の時がきた。ロンギヌスの槍を失った今、リリスによる補完はできん。唯一、リリスの分身たるエヴァ初号機による遂行を願うぞ」

SEELE「我らは人の形を捨ててまで、エヴァという名の箱舟に乗ることはない」

SEELE「これは通過儀式なのだ。閉塞した人類が再生するための」

SEELE「滅びの宿命は新生の喜びでもある」

SEELE「神も人も、全ての生命が死を以って、やがて一つになるために」

ゲンドウ「死は何も生みませんよ」

キール「死は、君たちに与えよう」


ゼーレにより戦自一個師団がネルフに送り込まれます。

ネルフも防衛戦力は有していますが、元々、対人戦闘を意図されていないため、ネルフの職員は一方的に虐殺されていきます。

戦略自衛隊の兵士は、ネルフがサードインパクトを引き起こそうとしているとして、突入の命令を受けています。兵士だけでなく、戦自の総司令官である日本の首相でさえ、サードインパクトを起こそうとしているのがゼーレであることを知りません。

使徒の精神攻撃による神経衰弱により、病院で治療を受けていたアスカでしたが、戦自がエヴァパイロットの抹消を目標にしていたため、ミサトの命令により、アスカは弐号機の中に移動させられていました。「死にたい。何もしたくない」とブツブツとつぶやいていた彼女でしたが、戦自による爆雷攻撃を受け、彼女の中に「死にたくない」というリビドー(生への衝動)が生まれます。そして、そのリビドーによって、弐号機の中で眠っていた母キョウコが目覚め、アスカの想いに応えます。

アスカは、母親に捨てられたと思っていましたが、母親が弐号機のコアの中でずっと見てくれていたこと、「死んではだめよ」と言い続けてくれたことを思い出し、自信を取り戻します。アスカは完全復活し、A.T.フィールドの意味を理解したことで、A.T.フィールドを防御だけでなく、攻撃にも使えるようになります。このA.T.フィールドの意味を理解するとは、どういうことなのでしょうか。


アスカ:ママ……ママ…………解ったわ!

    A.T.フィールドの意味!


アスカは、他人の言動や行動に影響を受けすぎる傾向にありました。反応し過ぎていたとも言えます。自信を持っているように見えて、実は、常に周りの言うことや行動に無防備であり、A.T.フィールドを張っているように見えて、攻撃を受け続けていたわけです。しかし、母親が自分を捨てたのではなく、ずっと見てくれていたことがわかり、他者から自由になりました。周囲の人が何と言おうが、自分はママが肯定してくれる、ママが見ていてくれるという確信が、彼女に自信を取り戻させたのです。つまり、これまでのアスカは強いA.T.フィールドによって、他者との間に壁を作っていたように見えて、実は、A.T.フィールドを持っていませんでした。あるいは、A.T.フィールドを張るべき位置が分かっておらず、他者を自分の内側まで入れすぎたり、必要以上に他者のA.T.フィールドに入ろうとし過ぎていました。しかし、他者から自由になったアスカは、他者との境界線において、どこまでが自分で、どこからが相手なのかを区別し、A.T.フィールドによって自分を守る方法を理解したのです。これが、A.T.フィールドを理解したという意味だと考えられます。

ここで言うA.T.フィールドとは、弐号機のものではなく、アスカのものなのですが、エヴァの操縦は、パイロットの精神状態に左右されるため、弐号機はA.T.フィールドを攻撃に使うことができるようになったということです。

弐号機を攻撃していた戦自部隊を壊滅させることには成功しましたが、直後、アスカは、量産型エヴァシリーズによる襲撃を受けてしまいます。アスカは善戦しましたが、ロンギヌスの槍のコピーによる攻撃を受けたことと、活動限界に達したことで、敗北してしまいます。

渚カヲルを殺してしまったことで、自暴自棄になっていたシンジでしたが、ミサトの呼びかけや、ユイ(初号機)に勇気づけされたことで、アスカの救出に向かいます。しかし、そこで見たものは、無残な弐号機の肉塊でした。

アスカの死を悟ったシンジは絶望します。そして、シンジの叫びに応え、ロンギヌスの槍が宇宙から初号機のもとに戻ってきます。

ゼーレは当初、シンジを殺害しようとしていたため、初号機を確保した後、自分達の計画に相応しいパイロットを用意するつもりであったと考えられますが、①シンジがデストルドーに満たされたこと、②ロンギヌスの槍が戻ったこと、により、急遽、デストルドーに満たされた初号機を依り代として、数の足りないエヴァシリーズの代わりに、ロンギヌスの槍のデストルドーを利用し、補完をこの場で開始することを決断します。

これはゼーレが当初計画していた補完計画ではありません。渚カヲルがナビゲートするわけではないため、ゼーレの魂だけでなく、すべての魂が補完されます。

SEELE「ロンギヌスの槍もオリジナルがその手に返った。いささか数が足りぬが、やむを得まい

エヴァシリーズを本来の姿に。我等人類に福音をもたらす真の姿に。等しき死と祈りをもって、人々を真の姿にそれは魂の安らぎでもある。では儀式を始めよう」


冬月「ゼーレめ。初号機を依代とするつもりか?」

シンジのデストルドーをエヴァシリーズが増幅させ、補完の準備が始まります。

キール「エヴァンゲリオン初号機パイロットの荒れた自我をもって人々の補完を」

「三度の報いの時を……今」


ゼーレによる補完計画が開始された時と同じくして、ゲンドウもまた、彼の補完計画を進めていました。しかし、シンジを求めたレイは、ゲンドウを捨て、シンジの元に向かいます。

レイは渚カヲルと同じように、無への回帰よりも、シンジを選びました。

綾波レイは自分のために危険を冒して助けに来てくれたゲンドウに愛を感じたものの、やはり自分を道具として使おうとするゲンドウではなく、シンジを求めたのです。


「アダムは、すでに私とともにある。ユイと再び遭うには、これしかない。アダムとリリスの、禁じられた融合だけだ」

「A.T.フィールドを、心の壁を解き放て。欠けた心の補完。不要な身体を捨て、全ての魂を今一つに。そして、ユイの元へ行こう」

「ことが始まったようだ。さあ、レイ。私をユイのところへ導いてくれ」

「まさか?」

「私は、あなたの人形じゃない」

ゲンドウの手にあるアダムの部分を吸収するレイ。


「……なぜだ?」

「私はあなたじゃ……ないもの」

「レイ!」


 呼び止めようとするゲンドウの声を無視して、レイは空中へと浮かぶとリリスの方へ向かって行きます。


「頼む……待ってくれ……レイ!」

「だめ。碇くんが呼んでる」

「……レイ!」


そして、レイはシンジと一つになるため、リリスと融合します。

「ただいま」

レイ=リリスは巨大化し、シンジの乗る初号機に近づきます。

デストルドーに満たされた初号機は、デストルドーの塊であるロンギヌスの槍を受け入れるためにコアを解放します。初号機とロンギヌスの槍は融合し、「生命の樹(セフィロトの樹)」へと還元されます。生命の樹とは、エデンの園の中央に生えていたもので、既に知恵の実を食べたアダムとイヴが、その生命の実をも食べて、神になってしまうことを恐れた神は、アダムとイヴをエデンの園から追放したとされています。


「使徒の持つ生命の実と、ヒトのもつ知恵の実。その両方を手に入れたエヴァ初号機は、神に等しき存在となった。そして今や、命の大河たる生命の木へと還元している。この先にサードインパクトの無からヒトを救う方舟となるか、人を滅ぼす悪魔となるのか?……未来は碇の息子にゆだねられたな」

「今のレイはあなた自身のものよ。あなたの願いそのものなのよ」

 母ユイの声が聞こえます。

「何を願うの?」

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9 Thoughts to “【エヴァ】なぜ人類補完計画は破綻したのか?徹底考察”

  1. John Smith

    異議申し立てしたら動画戻るんじゃないですか?偽名義での攻撃なのでは

    1. unknown

      返信遅くなり、ごめんなさい。その可能性もありますね。
      次はしっかり武装して、消されたときは異議申し立てしたいと思いますw

  2. John Smith

    異議申し立てしたら動画戻ったりしないのですか?私はこの動画がとても好きでした。今削除されているのはとても残念です

  3. 日向

    以前、作成された動画を拝聴しとてもわかりやすかったので
    もう一度見たいなと思ったのですがYouTubeから削除されてしまったようです。
    もう一度youtubeにあげることが難しければ、ニコニコ動画に上げ直して頂いて
    リンクを修正して頂けないでしょうか?

    お忙しいところ、お手数おかけしますが素晴らしい動画だったので
    再び見れる事を楽しみにしています。

    1. unknown

      返信、遅くなりすみません。
      新しいエヴァ動画を作り直そうと思います。すこし時間がかかると思いますが、よろしければ、そちらを見てもらえると嬉しいです。

      1. mado

        新しいエヴァの動画、待ってます

        1. unknown

          ありがとうございます!

  4. aki

    サラさんは精神分析学を深く理解されているように、この考察を見ると思えますが、その道の勉強はやはり大学などでなさっているのでしょうか?それたまある程度は、独学でも行える範囲なのでしょうか?

    1. unknown

      私の大学での専攻は、経営管理でした。心理学は趣味で図書館の本を借りて勉強しています。
      私の知識は、ぜんぜん深くないですよ。心理学を勉強されている方が私の動画を見たら、ツッコミどころ満載と思いますw