【エヴァ】なぜ人類補完計画は破綻したのか?徹底考察

なぜ人類補完計画は破綻したのか

喪失

前述したように、エヴァには魂がなく、パイロットがエヴァを操作する必要がありました。

2004年6月18日、ゲヒルンの箱根地下第2実験場で、初号機とテストパイロットによる接触実験が行われました。

パイロットは開発者の碇ユイが自ら行うことになっており、この時、既に3歳になっていた長男シンジも、母ユイの希望により、実験施設に連れてこられていました。夫の碇ゲンドウや冬月もその場に立ち会っています。

ゲンドウは、元々、他人に心を許すことができず、敵を作りやすい性格でしたが、屈託のない性格で、母性を与えてくれるユイと、愛する息子シンジの影響もあり、ユイやゼーレを利用した己の野心のことは忘れてしまい、生きる目的の対象がユイやシンジに移っていました。

しかし、この接触実験により、ユイは初号機に取り込まれてしまいます。ユイは実験場にシンジを連れてきていましたが、この事故は、母に捨てられたトラウマとして、シンジの心に深い傷を残すことになります。

その後、ユイを初号機から救い出すためのサルベージ計画が行われましたが、失敗に終わっています。

碇ユイは、初号機と同化することが目的で、起動実験の被験者に立候補したという説もあります。つまり、初号機に取り込まれることを知っていて、実験に臨んだということです。これは、起動実験前の冬月とユイとの会話において、「人はこの星でしか生きられません。でも、エヴァは無限に生きていられます。その中に宿る人の心とともに。」というユイの発言が根拠になっています。つまり、この「人の心」がユイの魂だということです。しかし、起動実験にシンジを連れてきており、「この子には明るい未来を見せておきたいんです。」と言っています。とても、子供と別れる母親の言葉とは思えません。また、事故後、ゲンドウはユイをサルベージで救出しようとしており、夫であるゲンドウにも真意を話さずに、初号機と同化したということになります。以上のことから、ユイが初号機に取り込まれる目的で被験者になったという可能性は低いと考えられます。

ユイは、冬月との会話で、ゼーレとゲヒルンを、「人類に最後の悲劇を起こさせない組織」であると肯定しながらも、同時に、人を簡単に滅ぼす、容赦ない組織だとも言っています。ユイは、ゼーレのメンバーの子女でありながらも、ゼーレの方針に疑問を持っていた可能性があります。そして、冬月は、ゼーレではなく、「君の考えに賛同している」と返答しています。この「ユイの考え」とは何なのでしょうか。ユイはゼーレとは違う計画を持っており、使徒から人類を守るためにゼーレを利用しつつも、シンジを含め、人類すべてをゼーレからも守ろうとしていたのではないかと考えられます。

被験者になることを止める冬月に、ユイは、自分が被験者になることが、シンジのためにもなると言っており、彼女が被験者になることが、ゼーレの計画に対抗するための、ユイの一手だったのではないでしょうか。

しかしながら、故意に初号機と同化したのではないとなると、ユイのサルベージが失敗した理由がなくなってしまいます。

後に、シンジは同じように、エヴァ初号機に取り込まれてしまいますが、シンジが再び人の形に戻りたいという意思(生への欲動)によって、サルベージに成功し、人に戻ることができています。

であるならば、ユイは人の形に戻りたくないという意思(デストルドー)を持っていたことになり、ユイは、自らの意思で初号機に残ったことになってしまいます。

事実、冬月も、ゲンドウに「彼女が一人で初号機に残ったのは、我々の生きる強さを、信じていたからこそではなかったか」と言っています。

以上のことから、次のようなシナリオであったのではないかと考えます。ユイは始めから初号機に取り込まれる目的で被験者になったわけではなかったが、初号機に取り込まれた後で、初号機と同化したままの方が、使徒とゼーレから人類を守るためには、最善であると考え、シンジやゲンドウの生きる強さを信じて、初号機に残ることを決断したというシナリオです。もちろん、シンジにとっては、母が消えたことはトラウマ的にショックな出来事となり、実際に、彼を苦しめ続けるのですが、最終的には、シンジをゼーレの計画から救うことができると考えたのではないでしょうか。事実、これ以降のストーリーで、彼女はほとんどの使徒を一人で倒し、ゼーレの計画をシンジと共に破綻させています。

もちろん、これらは仮設であり、ユイがなぜ初号機に残ったのか真相は不明です。

同時期、惣流・キョウコ・ツェッペリンも接触実験中に弐号機に取り込まれています。キョウコは、魂の全てを取り込まれたユイとは違い、娘を愛する母性の部分だけがエヴァに取り込まれています。その結果、キョウコは廃人同然となり、実験後は娘のアスカを認識することができず、人形を自分の子供として可愛がり、2005年、キョウコは首つり自殺してしまいます。そして、不運にもアスカが、その現場の第一発見者となってしまいます。

キョウコは以前から旦那の不倫を知っており、自分の愛する娘アスカに関する部分だけを持って、弐号機と同化し、不要な部分、汚れた部分をエヴァの体外に排出したと考えられます。しかし、それは残されたアスカにとっては最悪の状況を生み出してしまいます。

不倫に夢中になる父はアスカに関心がなく、唯一、アスカを「見ていてくれた」のは、母キョウコだけでした。にもかかわらず、その母は、アスカをネグレクトし続けた末に、自殺という究極な拒否という形で、アスカの前からいなくなってしまったのです。

そして、母の縊死体を目撃したことは、3歳程度の子供にとって、とても処理できる問題ではありません。

この幼少期の経験は、彼女を苦しめ続けることとなります。

これら2つの惨劇から新たに分かったことがあります。

エヴァを操縦するために、パイロットが必要であるということには間違いはありませんが、エヴァという神の肉体に等しき存在と、人間の魂の間には格差が大きすぎるため、そのエヴァとパイロットの格差を埋めるための介在(コア=魂)が必要になるということが分かりました。

研究により、パイロットとそのコアは誰でも良いということではなく、母親とその子供、特に幼少期に母を失い、母の愛情に飢えた子供が最も最適であるということがわかりました。

母の「子供を受け入れたい」という母性愛と、子の「母の体内に還りたい」という胎内回帰願望によって、コアとパイロットが繋がり、エヴァとパイロットが「シンクロ」することができるようになるのです。

碇ユイの事故は、表向きには、実験中の事故死として公表されています。エヴァについての情報などは隠蔽されたために、謎が多い事件として、マスメディアは人工進化研究所所長である碇ゲンドウによる殺人説として騒ぎ立てました。

ユイの息子であるシンジは、目の前で事故を目撃してしまいます。

そして、母が目の前で消えてしまうという衝撃的な記憶は、シンジの意識上の記憶からは消えてしまい、無意識下に抑圧されてしまいます。

結果、母とエヴァについての記憶を引き出せなくなったシンジは、マスコミの報道の影響もあり、父親であるゲンドウが原因だったと考えるようになってしまいます。

碇ユイの事故後、ゲンドウは姿を消します。そして、1週間後、ゲヒルンの冬月の前に現れ、「人類補完計画」をキール議長に提唱したことを告白します。碇ユイのおかげで、他者に対して心を開きつつあったゲンドウでしたが、この日を境にゲンドウは豹変してしまいます。

碇ユイを取り戻すためであれば、いかに多くの敵を作ろうとも、いかに多くの人を苦しめても、ユイだけは笑ってくれると信じ、ゲンドウはゼーレのみならず、世界を利用することを決断します。

そして、憮然として、他人に弱みを見せないようにして、目的遂行のみに集中することで、他者から自由になり、最も傷つかない行き方を選びました。

その過程で、ゲンドウはシンジにも心を閉ざし、シンジは父を恐れ、避けるようになってしまいます。

ゲンドウはゼーレの人類補完計画を乗っ取り、初号機のユイと自らが同化することを計画します。冬月コウゾウもまた、碇ゲンドウのためではなく、愛するユイのためにゲンドウの計画に協力します

潔癖症の冬月は教授と生徒の間で、性愛に溺れることに汚れを感じていたと考えられます。そして、碇ゲンドウの妻となったユイに内心では、想いを寄せ続けていたことにも汚れを感じていました。

冬月は自分の真なる欲望を抑圧し続けたことで、新しい自らの一歩を踏み出すことができず、碇ゲンドウに求められるまま、計画に巻き込まれていきます。

新たな世界を見たいという建前で、ユイに再会したいという本音を誤魔化しながら、ゲヒルンに残り続けました。

人類補完計画

ここで人類補完計画について、解説しておきたいと思います。

ゼーレの最終計画である人類補完計画とは、つまりは、不老不死のことですが、単に死なない肉体を手に入れるというものではありません。悩みや苦しみのない、完全なる個体になるということです。

ドイツの心理学者、アルフレッド・アドラーは「人間の悩みは、すべて人間関係にある」と言いいました。アドラーの見識が正しいとすれば、たとえ不老不死の肉体を得たとしても、人間関係から開放されない限り、悩みは生まれ、苦しみからは永遠に開放されることはありません。リリン(人類)はリリスから生まれ、他者を認識したときから、弱い群体となってしまったということです。

個々の人間はA.T.フィールドで自分と他者の自我境界を作りましたが、その結果、他者の存在を認識し、羨んだり、憎んだりするようにもなりました。そして、この欲求は、他者と一つに戻りたい、自分という存在を消したいという死の衝動、デストルドーを生み出しました。この一つに戻りたいという気持ちは、他者と愛を深めたり、性行為などでごまかすことはできますが、いずれ裏切られ、再び満たされなくなります。つまり、「寂しい」という感情からは、人は永遠に逃れられないということになります。

このリリン(人類)が背負った永遠に逃れられない苦しみを「原罪」と呼びます。(聖書に書かれている原罪とは一致しない)

人類補完計画とは、つまりはこの原罪を「贖罪」し、単一の個体になることで、個々の群体の欠けた心を補完することです。この世に他者が存在せず、他者と自分が曖昧な世界に永遠に生きることができれば、人は二度と苦しむことがない安らかな世界、つまりは、聖書に登場する楽園、エデンの園で永遠に生きられるということになります。

人類を補完する方法にはいくつか方法がありますが、ゼーレのシナリオは次のようなものであると考えられます。

まず、裏死海文書で予言されている、すべての使徒のせん滅を行います。その上で、リリスを用いて、地球規模のアンチA.T.フィールド(無制限の神の自我)を展開し、個々のリリンの持つA.T.フィールドを中和し、人を魂とL.C.Lに還元します。これが先に説明した「贖罪」になります。セカンドインパクト後の南極を、ゲンドウが「原罪なき穢れのない世界」と呼んでいるのはそのためです。アダムの展開したアンチA.T.フィールドによって、南極の生命は全てL.C.Lに還元されました。

そして、贖罪によって、全てのリリスベースの生命を魂とL.C.Lに還元した上で、完全な個体となるのですが、ゼーレのシナリオでは、選ばれしもの、つまりは、ゼーレのメンバーの魂だけが、リリスと融合して完全な個体となり、新たな地球の始原の存在となります。すなわち、ゼーレの人類補完計画では、補完によって救われるのはゼーレのメンバーの魂のみであり、それ以外の不要な魂(ゼーレにとって)は無へと帰します。そして、ゼーレの思うがままの生態系を地球に築いていくというのが彼らの計画です。全てのリリスベースの生命で、一つの個体に戻ることは可能ですが、ゼーレはそれを望んでいません。宗教教団をベースに持つゼーレは、単一の神を信じ、熱心な信者だけが救済されることを望んでいるのです。

しかし、他のリリンと何ら変わらない肉体を持つゼーレが、生命の起源たるリリスを思うがままにコントロールするためには、生命の起源の魂を持ったナビゲーターが必要となります。それが、セカンドインパクトの際に作りだされた、「渚カヲル」です。ゼーレによって人為的に産みだされた渚カヲルは、仕組まれた生から開放されるために、ゼーレに仕えることが定められています。

渚カヲルは、ゼーレの計画には不可欠な存在であり、碇ゲンドウにさえ、渚カヲルの存在は隠されています。

このゼーレの人類補完計画に必要なマテリアルは、リリス、リリスのアンチA.T.フィールドを増幅するために必要なエヴァシリーズ13体、ナビゲーターである渚カヲルとなります。また、ナビゲーターを用いず、強制的にリリスにアンチA.T.フィールドを展開させるためには、ロンギヌスの槍も必要となります。

一方、ゲンドウはこの計画を乗っ取り、自らの目的を果たす人類補完計画を秘密裏に遂行します。ゼーレの計画では、たとえ、ゼーレだけでなく、全ての人類が補完されたとしても、ゲンドウの魂がユイの魂と再会できるかどうかは、定かではありませんでした。リリスのクローンであり強力なA.T.フィールドを展開できる初号機に取り込まれたユイは、リリスのアンチA.T.フィールドによって魂に還元されるかが不明でした。ゲンドウにとって、ユイと確実に再会するためには、初号機=ユイとの同化以外にはなかったのです。

ゲンドウの計画は使徒をせん滅するまでは、ゼーレのそれと同じです。

しかし、ゲンドウは、リリスの元で単体の生命に戻ることを望みはしません。ゲンドウの目的はユイとの再会であり、ユイと共に新たな神となり、自分達の世界を作ることでした。

そのためには、二人が神になる必要があります。神とは、知恵の実、生命の実の両方を持つ存在のことです。

まず初号機=ユイに何らかの方法でS²機関を取り込ませた上で、ユイを神に等しき存在とします。同時に、ゲンドウはアダム計画により作られたアダムの胎児を自らの体内に取り込み、疑似的にアダムの肉体を持ちます。そして、「綾波レイ」をナビゲーターとして、初号機の肉体と融合します。綾波レイは、ゼーレには秘密裏に、ゲンドウと冬月が、ユイとエヴァの遺伝子からクローン再生させた肉体に、リリスの魂を受肉させたものであり、渚カヲルと同じように、始原の存在をコントロールできます。ゲンドウとユイが同化した時点で、綾波レイは、ゼーレの計画における渚カヲルと同じように、仕組まれた生から開放されます。

しかし、これだけでは、ゲンドウとユイは「完全な神」にはなれません。ロンギヌスの槍があるためです。始原の存在であるアダムやリリスが神になれない理由がロンギヌスの槍であると前述しました。そのため、ゲンドウは計画の最終段階までに何らかの方法でロンギヌスの槍を消滅させる必要があります。

ロンギヌスの槍の消滅によって、神となったゲンドウ=ユイは地球規模のアンチA.T.フィールドを展開し、全生命を魂とL.C.Lに還元します。

最終的に、聖書第一章で達成されるはずであった、アダムとリリスの交わり(融合)によって、第一始祖民族にとっては、「禁断の交わり」によって、新たな世界を構築するというのがゲンドウの計画になります。


ゲンドウ「アダムはすでに私とともにある。ユイと再び逢うにはこれしかない。アダムとリリスの禁じられた融合だけだ」


まとめると、ゼーレの計画は選ばれしものだけが神と融合する計画。ゲンドウの計画は神そのものになる計画と言えます。

(人は神を拾ったら何をするか。自分も神になろうと思ったのである。)

ゼーレは渚カヲルを、ゲンドウは綾波レイを、それぞれ互いに隠蔽しながら、保持しています。

以上から、ゲンドウの計画に必要なマテリアルは、アダムの胎児、S²機関を搭載した初号機、綾波レイ(ナビゲーター)、そして、ロンギヌスの槍の破壊になります。

ゲンドウの計画にもエヴァシリーズが必要であるかは不明ですが、神となったゲンドウとユイには、不要と思われます。

以降、ゼーレはゲンドウの監視を続け、ゲンドウはゼーレに悟られないように自らの計画を成就させようとします。

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9 Thoughts to “【エヴァ】なぜ人類補完計画は破綻したのか?徹底考察”

  1. John Smith

    異議申し立てしたら動画戻るんじゃないですか?偽名義での攻撃なのでは

    1. unknown

      返信遅くなり、ごめんなさい。その可能性もありますね。
      次はしっかり武装して、消されたときは異議申し立てしたいと思いますw

  2. John Smith

    異議申し立てしたら動画戻ったりしないのですか?私はこの動画がとても好きでした。今削除されているのはとても残念です

  3. 日向

    以前、作成された動画を拝聴しとてもわかりやすかったので
    もう一度見たいなと思ったのですがYouTubeから削除されてしまったようです。
    もう一度youtubeにあげることが難しければ、ニコニコ動画に上げ直して頂いて
    リンクを修正して頂けないでしょうか?

    お忙しいところ、お手数おかけしますが素晴らしい動画だったので
    再び見れる事を楽しみにしています。

    1. unknown

      返信、遅くなりすみません。
      新しいエヴァ動画を作り直そうと思います。すこし時間がかかると思いますが、よろしければ、そちらを見てもらえると嬉しいです。

      1. mado

        新しいエヴァの動画、待ってます

        1. unknown

          ありがとうございます!

  4. aki

    サラさんは精神分析学を深く理解されているように、この考察を見ると思えますが、その道の勉強はやはり大学などでなさっているのでしょうか?それたまある程度は、独学でも行える範囲なのでしょうか?

    1. unknown

      私の大学での専攻は、経営管理でした。心理学は趣味で図書館の本を借りて勉強しています。
      私の知識は、ぜんぜん深くないですよ。心理学を勉強されている方が私の動画を見たら、ツッコミどころ満載と思いますw