【エヴァ】なぜ人類補完計画は破綻したのか?徹底考察

なぜ人類補完計画は破綻したのか

碇シンジ

シンジが初号機パイロットに選ばれた理由は、初号機のコアがシンジの母親である「碇ユイ」であるためです。ゲンドウは、息子であるシンジを使い、初号機の中のユイを覚醒させようとしています。覚醒は初号機の中にいるユイの魂が、完全に初号機をコントロールしている状態のことです。この時点でのユイの魂は、基本的には眠っており、シンジが危険な目に遭った時など、シンジの本能的な欲動に反応する一時的な覚醒、いわゆる、暴走のみが起きています。

シンジの抱えるトラウマは、母親に捨てられたことと、父親がシンジから去ったことです。

実際には、母ユイはシンジを捨てた訳ではありません。事故のショックにより、ユイに関する記憶が、全て無意識下に抑圧されてしまっているだけで、捨てられたという記憶は、自ら思い込んでいるか、あるいは、周囲からそう言われたことを信じているだけです。また、ゲンドウに関する記憶についても、シンジが自らの意思で、父親の元から去っているのですが、この記憶も、シンジの都合のいいように歪曲されてしまっています。ゲンドウは、シンジが必要でなくなり、シンジを捨てたと思っています。

このような記憶の「忘却」は、自己防衛のために行われると精神分析学の創始者として知られるジークムント・フロイトは指摘しています。そして、忘却された記憶は消滅せず、無意識下に残り、その後の意思決定や対人関係などに影響、(多くの場合、良くない影響)を与えるとされています。

フロイトによれば、男子が最初に性愛の対象とするのは母親であるとされています。そして、男子は母親を独占して近親相姦を求めますが、父親によってその欲求が打ち砕かれます。(去勢不安)この経験によって、男子は、自分には思い通りにならないことがあることを知り、「超自我」、簡単に言えば、欲求を抑え込む力を手に入れることができるとされています。そして、男子にとって、父親は母親を奪う敵でありながら、同時に、母親を手に入れた羨むべき対象となり、男子の成長モデルとなります。(同一視)

このような、父親を目標とする成長の動機づけは、男子の成長には重要な役割を果たすとフロイトは云います。しかし、シンジの場合、トラウマによって母の記憶を丸ごと忘却してしまっており、母からの愛を父親に求めてしまっています。結果、自分を捨てた父親に敵意を持ちながらも、内面では、父親から愛されたいという矛盾した感情を持っています。そして、シンジ自身は、自分が本当は父親に愛されたい、認められたいと思っていることをまだ意識していないため、この無意識下で起こっている葛藤状態が彼に様々なパーソナリティ障害を引き起こしています。

特にシンジに色濃く出ている障害が「回避性パーソナリティ障害」です。

このタイプの障害を持つ人は、極度に他者に評価されることを恐れ、恥をかいたり、屈辱的な思いをする可能性があることを極端に避けようとします。しかし一方では、周りから認められたい、評価されたいという気持ちを人一倍強く持っています。このタイプの人は、失敗したときに自分が責められてしまうリスクを避けるため、新しいことに取り組む場合は、人に命令されたり、後押しされないと行動できません。

シンジの、パーティーで会話に入れない、人にやめろと言われないからチェロを続けた、エヴァに搭乗する理由を他人に求めているというような行動は、どれも回避性パーソナリティ障害に関係しているように見えます。

シンジは、自分の価値の評価方法を他人の評価に頼っているため、自分に自信を持つことができません。そのため、他人の顔色ばかりを伺ってしまう傾向にあります。

自分が正しいと思うから、選択するのではなく、こうすれば他人に怒られない、こうすれば、他人に求められるという視点で行動してしまいます。

そのため、ミサトが昇進した際も、昇進が他者に認められたという証明にも関わらず、嬉しそうに見えないミサトをシンジは不思議そうに見ています。

シンジは、幼いころに両親から捨てられた、実際には、捨てられたと思っているため、特に承認欲求が強く表れています。

ミサトとの関係でも度々、「怒らないんですか?そうですよね。他人なんだから」や、「どうせ僕がエヴァに乗るしかないんでしょ」という会話の仕方をします。このような話し方は、ミサトを度々いら立たせていますが、シンジはミサトから「あなたは他人ではないわ。大切な人よ。」「あなたが必要なの」という言葉を引き出したいのだと考えられます。

サキエル戦で、恐ろしい経験をしたのにも関わらず、シンジが再びエヴァに乗ることに同意したことをネルフ職員のマヤは驚いています。

人間関係よりもはるかに恐ろしい使徒との闘いを、なぜシンジは回避しないのでしょうか。

シンジは、自分の自由が奪われることや、エヴァに乗って怖い思いをすることよりも、他人から価値がないと思われることに恐怖しているためです。そのため、度々、「もう乗りたくない」と言うことはありますが、綾波レイやミサトから「あなたはエヴァに乗らなくてもいいわ」と言われると、急に不安になってしまうのです。

リツコはシンジが「ヤマアラシのジレンマ」にかかっていると言っています。

「ヤマアラシのジレンマ」は、寒い冬に、ある2匹のヤマアラシが互いに近づいて体を温め合おうとする話ですが、その長い針のために、近づきすぎると、互いを傷つけあってしまいます。しかし、痛みを伴いながらも、温かくて傷つかない、丁度良い距離を探すことができるようになります。

ミサトが言うように、「大人になるってのは近づいたり離れたりを繰り返して、お互いがあんまり傷つかずに済む距離を見つけ出すってこと」という意味です。

シンジはまだ、他人との丁度良い距離がわからないため、無意識に相手を傷つけたり、傷ついたりしてしまいます。

今まで回避することで、自分を守りながら生きてきたシンジでしたが、ミサトとの同棲生活や、クラスメイトの強引な接触により、傷つきながらも徐々に他人との距離を縮めていきます。

葛城ミサト

前述したように、ミサトはセカンドインパクトで父親を亡くしています。

ミサトの幼少期は「いい子」になることが目的でした。

自分や母のことを愛さず、仕事しか頭にない父親を憎んでいましたが、内面的には、

母は「いい子」でないために、父親から愛されないのであって、結果的に、いつも泣いてばかりいると思っていました。そのため、ミサトは、自分はいい子になって、父親に愛されたいという感情を無意識に持っていました。

しかし、それまで憎んでいると思っていた父親が、自分の身代わりになって死んだことで、初めて内面では、父親を愛しており、愛されたいという感情を持っていたことに気づきます。

ミサトは、父親の仇を討つためにネルフに入りますが、実際には、父親のことを知りたい、父親に近づきたいという内面的な欲求に突き動かされており、それは、使徒を初めて倒したときに、自分がまったく喜んでいないことで気づいてしまいます。

ミサトが望んでいたのは、父親の仇を討った自分を、父親に褒めてもらうことだったからです。ですが、そこにはもう父親はいません。

ミサトはシンジの保護者役を買って出て、強引に同棲生活を始めています。単なる同棲ではなく、シンジを叱ったり、励ましたりするなど、さながら、母親の様に接しているように見えます。しかしながら、これはミサトが、自分と同じく、父親に愛されたい願望を持っているシンジに、自分を重ねているためです。シンジは幼いころのミサトと同じように、父親に愛されたいと思いながらも、父親を敵視しています。ミサトは、自分が父親にして欲しいことをシンジにしているのです。使徒を倒したシンジを褒めたり、愛する人の死に苦しむシンジを慰めたり、そして、シンジが落ち込んだ時には、肉体的接触さえ持とうとしています。これは全て、ミサトが同じような状況にあった時、父親からして欲しかったことです。

赤木リツコ

科学者としての母を尊敬していたリツコは、母を追ってゲヒルンに就職しました。

しかし、若かりし頃のリツコは、ゲンドウと情欲に溺れる母を目撃し、女としての母を不潔と感じてしまいます。世間的には、碇ユイは事故死ということになっていますが、実際には、碇ユイはエヴァ初号機の中で生きていることを、ナオコもリツコも知っており、リツコには、母の行動を不貞行為と考えたのでしょう。

しかし、母ナオコの死後、リツコの科学者としての優秀さを利用するために、ゲンドウはリツコと強引に肉体関係を持ちます。無理やりに関係を持たされたリツコでしたが、自分が母と同じようにゲンドウと情欲に溺れたとき、彼女は自分が汚れたと感じました。リツコが髪の毛を染めたのもこの時期です。

リツコの後輩であるマヤは、母を不潔と思っていた頃のリツコと同じように潔癖症ですが、リツコは彼女を自分と同一視し、潔癖症でいることに警告しています。

リツコ:潔癖症はね、辛いわよ。人の間で生きていくのが。汚れた、と感じたとき分かるわ。それが。

ゲンドウはリツコを自らの野望に利用するために関係を持ちました。しかし、男性経験の乏しいリツコは、強姦から始まった関係にも関わらず、ゲンドウに恋してしまいます。これが彼女にとっては、本当の悲劇の始まりとも言えます。

リツコは、ゲンドウに素直に甘えることができません。リツコはミサトの前では、チルドレンたちのことをモノの用に扱います。「さっき届いたわ」「メンテナンスは・・」などです。

しかし、ゲンドウの前では、「つらいでしょうね。あの子たち」と同情するように話しています。これは自分自身がゲンドウに道具として扱われていることを感じているため、チルドレンたちを自分の代わりとして使い、「自分のことを大事にして」、「道具として扱わないで」と言いたいのだと考えられます。ですが、ゲンドウが女としての自分に、興味がないことも理解しています。そして、自分が嫌っていた母が自分と同じようにゲンドウに利用されていたことを知っているため、女としての母を嫌悪しているのです。つまり、女としての母親は、自分が見たくない自分の嫌いな部分であり、リツコが最も嫌悪しているのは、母ではなく、利用されていると知っていながら、ゲンドウに愛されたいあまり、ゲンドウの手足となっている自分自身なのです。

ですが、プライドの高いリツコは、自分を責めることはできず、その敵意を母や綾波レイに向けてしまっているのです。

科学者として、世界中から尊敬されている彼女ですが、女性としてのリツコは未熟でした。それをゲンドウは自らの野望に利用しました。リツコは、ゲンドウに科学者としてではなく、一人の女性として求められることを望みます。しかし、ゲンドウにとって、女性はユイだけであり、人類補完計画が達成されれば、ユイとゲンドウは再会し、リツコは捨てられます。

リツコは、自分がいずれ捨てられる運命であることを知りながら、それでもゲンドウに従います。

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9 Thoughts to “【エヴァ】なぜ人類補完計画は破綻したのか?徹底考察”

  1. John Smith

    異議申し立てしたら動画戻るんじゃないですか?偽名義での攻撃なのでは

    1. unknown

      返信遅くなり、ごめんなさい。その可能性もありますね。
      次はしっかり武装して、消されたときは異議申し立てしたいと思いますw

  2. John Smith

    異議申し立てしたら動画戻ったりしないのですか?私はこの動画がとても好きでした。今削除されているのはとても残念です

  3. 日向

    以前、作成された動画を拝聴しとてもわかりやすかったので
    もう一度見たいなと思ったのですがYouTubeから削除されてしまったようです。
    もう一度youtubeにあげることが難しければ、ニコニコ動画に上げ直して頂いて
    リンクを修正して頂けないでしょうか?

    お忙しいところ、お手数おかけしますが素晴らしい動画だったので
    再び見れる事を楽しみにしています。

    1. unknown

      返信、遅くなりすみません。
      新しいエヴァ動画を作り直そうと思います。すこし時間がかかると思いますが、よろしければ、そちらを見てもらえると嬉しいです。

      1. mado

        新しいエヴァの動画、待ってます

        1. unknown

          ありがとうございます!

  4. aki

    サラさんは精神分析学を深く理解されているように、この考察を見ると思えますが、その道の勉強はやはり大学などでなさっているのでしょうか?それたまある程度は、独学でも行える範囲なのでしょうか?

    1. unknown

      私の大学での専攻は、経営管理でした。心理学は趣味で図書館の本を借りて勉強しています。
      私の知識は、ぜんぜん深くないですよ。心理学を勉強されている方が私の動画を見たら、ツッコミどころ満載と思いますw