【エヴァ】なぜ人類補完計画は破綻したのか?徹底考察

なぜ人類補完計画は破綻したのか

綾波レイ

綾波レイは、目的を与えられて作られました。これは、目的を与えられて作られていない、一般的な人間とは違います。

人類は創造主によって作られ、目的が与えられていると信じるキリスト教徒やユダヤ教徒のような人々を抜きにすれば、目的をもって作られた綾波レイは一般的な人間とは違います。

綾波レイは創造主ゲンドウによって作られたのです。そして、目的を与えられました。

彼女は、幼いころから、そのように教えられ、育てられてきました。

実際には、綾波レイの魂はリリスのものであり、肉体はセントラルドグマにあります。そして、リリスこそがリリン=人類を作った創造主なのですが、この段階では、綾波レイはそのことを知らないと考えられます。

綾波レイは、自分が人を造ったリリスであることは知りませんが、定期的にL.C.Lに入らないと人としての肉体を保てないことや、死んでも自分の代わりのクローンがいることは知っています。レイの記憶は定期的にバックアップが取られ、新しい肉体に受け継がれます。そのため、彼女自身、自分が普通の人間ではないことは理解しています。

綾波レイは、目的を果たし、安息=死を目指しています。目的とは、ゲンドウの人類補完計画を達成することです。それはすなわち、自らの死を意味していますが、綾波レイにとっては、死とは目的からの解放であり、安息を意味します。(繰り返しクローン再生されなくなる)

綾波レイと同じように、ナビゲーターとして作られた渚カヲルは。「生と死は等価値なんだ、僕にとってはね。自らの死、それが唯一の絶対的自由なんだよ。」と語っており、渚カヲルもまた、目的達成による安息を求めていることがわかります。

これまで、目的(死と安息)を達成するために、与えられた任務に忠実に従い、生への執着を見せない綾波レイでしたが、第3使徒「サキエル」の侵攻の1か月前に起こった事故が、彼女に生への執着を目覚めさせてしまいます。

それは、綾波レイと零号機の起動実験中に起こりました。突然、零号機が暴走し、レイのエントリープラグは強制排出され、地面に叩きつけられてしまいます。

仮にレイが死亡したとしても、新たなレイのクローンにリリスの魂を受肉するだけで済むため、計画に支障はないはずですが、碇ゲンドウは、なぜか大やけどを負いながらも、エントリープラグからレイの救出作業を行いました。

碇ゲンドウは、綾波レイにユイの面影を見ているためか、当初の目的とは無関係に、レイに執着するようになっています。レイへの過剰な執着は、計画に支障をきたすため、冬月も度々危惧しています。

しかし、このゲンドウの不合理な行動が、レイに生への執着を目覚めさせることになってしまいます。

綾波レイは、自分のことを道具としてしか思っていないはずのゲンドウが、目的とは関係なく、危険を冒してまでレイを助けに来たことで、無条件の愛を感じてしまいます。

そして、綾波レイは、その事故で割れてしまったゲンドウのメガネを大切に持っています。これは、他者への執着、記憶への執着であり、すなわち、生への執着そのものです。

同時に、このゲンドウの不合理なレイへの行動が、リツコのレイに対する嫉妬も産み出してしまいます。「なぜ私のことは道具のように扱うのに、道具として扱われるべきレイが私よりもゲンドウに愛されているのか」という感情がリツコに生まれたと考えられます。

綾波レイは感情を表出することがうまくできません。これは、レイがリリスの魂を持っているからだけではなく、幼いころから、両親や兄弟、友人、あるいは、それらの代わりとなって、綾波レイと愛を持って接しくれる人がいなかったためと考えられます。

そのため、自分に何かしらの価値がないと周囲との「繋がり」が作れないと、レイは思っています。自分には、人類補完計画の材料になることや、エヴァパイロットとして戦う以外の価値がないと思っており、自ら進んで危険な役割に立候補し、度々、他者の代わりに自分の命を消費しようとします。

綾波レイの肉体は、死んだとしてもクローンから再生できます。しかし、他人が綾波レイを綾波レイと認識しなくなれば、綾波レイは消えてしまいます。だからこそ、綾波レイは他者との絆を大切にするのだと考えられます。

ところで、母を持たないレイが、なぜ零号機を動かせるのでしょうか。

零号機は、初号機や弐号機のように、人間の魂のコアは入っていないと考えられています。

レイがユイやキョウコのように、エヴァに取り込まれることなく、零号機を動かすことができる理由は、彼女の魂がアダムと同じ、始原の存在であるリリスのものであるためと考えられます。始原の存在であるリリスとエヴァの間には、リリンとエヴァの間にあるような格差はなく、コアなしに操作が可能であると考えられます。

後に渚カヲルは、弐号機を操作していますが、これも同じ理由で、渚カヲルはアダムの魂をもっているためです。しかしながら、アダムの魂を持つ渚カヲルほどは、うまくシンクロできず、綾波レイは零号機とシンクロするまでに7ヶ月を要しました。

コアがなくても綾波レイはエヴァを操作できると言いましたが、コアがあると綾波レイにとっては、むしろ邪魔になってしまうというのが正しいでしょう。

渚カヲルは、弐号機を操作した際、「魂さえなければ同化できるさ。この弐号機の魂は、今自ら閉じこもっているから。」と言っています。つまり、零号機にコアがあれば、コアが覚醒した際、綾波レイと反発しあってしまうため、操作が難しくなります。

綾波レイは後に初号機ともシンクロしますが、初号機の中の碇ユイが覚醒に近づくにしたがい、シンクロできなくなります。

惣流・アスカ・ラングレー

前述したように、アスカの母親の惣流・キョウコ・ツェッペリンはアスカがまだ幼いころに、弐号機にアスカを愛する母性の部分が取り込まれてしまい、廃人同然になってしまいます。

しかし、母がなぜ自分のことを忘れてしまったのか、幼いアスカは知りません。アスカは、母が自分に興味がなくなり、人形に興味が移ったのだと思ってしまいました。これは、子供よりも、男や仕事、ギャンブルなどに親が夢中になってしまうことから生じる、ネグレクトに似ています。この「母に無視された」「母に見て欲しい」という強い感情が、アスカを苦しめ続けます。

アスカが弐号機パイロットに選ばれた理由は、シンジと同じように、弐号機のコアが、アスカの母親であったためです。アスカはパイロットに選ばれた自分を母が褒めてくれて、再び自分を愛してくれるようになると思い、母親のもとに駆け付けます。しかし不幸にも、その場で、アスカは母親の首吊り現場の第一発見者となってしまいます。アスカを置いて自殺するという、最も強い「拒絶」をアスカは最後に母から受けてしまいます。

母の死後、父親は不倫関係にあった女性と再婚します。

この時から、アスカは義母や父親に子供扱いされることを拒否し、大人の振る舞いをするようになります。

他人に依存する生き方をした母のように死にたくない。だから、一人で生きると決心したためですが、内面では、常に捨てられてしまうのではないかとおびえていました。

アスカは、14歳にして大学を飛び級で卒業しています。一見、周りから見れば、とても優秀で、自信のある子供に見えますが、内面的には、自分に自信がなく、愛に飢えており、「私を見て」という承認欲求を強く持ち続けています。

周りに対して、異常なまでに競争心を強く持ち、大学卒業や、一回り以上年上の加持への執着も、他者との競争心の現れだと考えられます。

これは、誰よりも優れていないと自分は捨てられるという脅迫観念によるものです。アスカがエヴァのパイロットにこだわるのも、自信のなさの現れです。

アスカがエヴァにこだわるのは、心理学で「摂取」と呼ばれるものだと考えられます。摂取の例として、子供の受験を親が応援し、その成果をあたかも自分の成果とするような行為があげられます。子供が偏差値の高い学校に合格することで、自分の学歴や年収などに対する劣等感を、払拭した気持ちになれるためです。

エヴァは誰もが畏怖する兵器であり、人類にとって重要な存在です。その重要な存在に自分が乗ることで、エヴァへの期待を自分が受け取ることができるのです。

しかし、これが常識化すると、エヴァが自分そのものになってしまいます。例えば、自分に自信がない人ほど、国やお金のような、大きな信頼があるものを自分の価値に取り込みやすい傾向にあります。しかし、それが常識化すると、自分=国家、自分=お金となり、国が批判を受けると、自分が批判されている気分になったり、自分の力を誇示するために、必要のないブランド品や高級腕時計などにお金を使ってしまうようになります。マルチ商法や新興宗教が、自信のない人を狙うのは、これが理由です。こういった団体は、巧みに自信のない人に、偽物の自信を与え、信者はその自信を守るために、搾取されます。

アスカはエヴァに対する依存が強すぎたため、エヴァに乗れなくなった時、生命の危機に直面するほど自信を喪失してしまいます。

アスカも、シンジと同じように、パーソナリティ障害を抱えているといえるでしょう。

最も強く現れているのが、自己愛性パーソナリティ障害です。

自己愛性パーソナリティ障害の特徴として「自分は特別な存在である」という感覚を持っていることです。しかし、これは自信によって支えられたものではなく、むしろ自分に自信がなく、「自分を特別な存在として見て欲しい」という欲求の裏返しです。アドラーはこれを「優越コンプレックス」と呼び、自分に劣等感を感じている人が、それを打ち消すために、自分を優れた人間であると見せかけようとする行動だと指摘しています。

シンジとの初体面では、弐号機をシンジに自慢し、弐号機がいかに初号機や零号機より優れているかを自慢しています。人が自分の所有物や所属する組織を他者に自慢するときは、自分自身に自信がない場合、あるいは、他者に劣等感を感じている時です。

アスカは、加持がシンジを褒めたことや、すでにシンジが実戦を経験していることに劣等感を感じていました。もしアスカが単に人類を使徒から守るために戦っているのであれば、仲間のエヴァと自分のエヴァのどちらが優れているかについて、張り合う必要性はありません。

「優越コンプレックス」を抱える人は、「普通であることの勇気」を持てないため、他者より自分が優れていると思えないと不安になるのです。

自己愛性パーソナリティ障害の特徴の一つとして、自分のミスや失敗を他者の責任にする傾向が強く、逆に、他人の責任で自分に被害が及んだり、批判を受けた場合には、たとえ小さなことでも、容赦なく他人を攻撃します。そして、他人との距離を掴むことができず、無遠慮に他人の領域に入り込んでしまいます。

アスカは、特にシンジを強く攻撃します。これには理由があります。シンジとアスカは正反対の性格にも見えますが、どちらも他人に捨てられたくない、他人から期待してほしいという願望を持っています。

ですが、二人はその反応の仕方が違います。シンジは、「他者を恐れるために」、他者を回避しようとします。一方、アスカは、「他者を恐れるために」、他者を攻撃したり、他者に勝っているという実感を求めます。

アスカはすぐに謝るシンジを内罰的と批判します。これは、自信のないシンジを見ていると、もうひとりの自分を見ているようで、イライラしてしまうためです。

これは、カール・グスタフ・ユングが「影(シャドウ)」と呼ぶものです。人は自分が隠したい性格を持っている人に対し、人によって、攻撃的になったり、批判的になったり、あるいは、甘やかしたりします。前述したように、ミサトがシンジを甘やかすのは、ミサトがシンジを「影(シャドウ)」と思っているためです。

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9 Thoughts to “【エヴァ】なぜ人類補完計画は破綻したのか?徹底考察”

  1. John Smith

    異議申し立てしたら動画戻るんじゃないですか?偽名義での攻撃なのでは

    1. unknown

      返信遅くなり、ごめんなさい。その可能性もありますね。
      次はしっかり武装して、消されたときは異議申し立てしたいと思いますw

  2. John Smith

    異議申し立てしたら動画戻ったりしないのですか?私はこの動画がとても好きでした。今削除されているのはとても残念です

  3. 日向

    以前、作成された動画を拝聴しとてもわかりやすかったので
    もう一度見たいなと思ったのですがYouTubeから削除されてしまったようです。
    もう一度youtubeにあげることが難しければ、ニコニコ動画に上げ直して頂いて
    リンクを修正して頂けないでしょうか?

    お忙しいところ、お手数おかけしますが素晴らしい動画だったので
    再び見れる事を楽しみにしています。

    1. unknown

      返信、遅くなりすみません。
      新しいエヴァ動画を作り直そうと思います。すこし時間がかかると思いますが、よろしければ、そちらを見てもらえると嬉しいです。

      1. mado

        新しいエヴァの動画、待ってます

        1. unknown

          ありがとうございます!

  4. aki

    サラさんは精神分析学を深く理解されているように、この考察を見ると思えますが、その道の勉強はやはり大学などでなさっているのでしょうか?それたまある程度は、独学でも行える範囲なのでしょうか?

    1. unknown

      私の大学での専攻は、経営管理でした。心理学は趣味で図書館の本を借りて勉強しています。
      私の知識は、ぜんぜん深くないですよ。心理学を勉強されている方が私の動画を見たら、ツッコミどころ満載と思いますw