【エヴァ】なぜ人類補完計画は破綻したのか?徹底考察

なぜ人類補完計画は破綻したのか

ディラックの海

ゲンドウから褒められたことで、自信過剰になったシンジは、独断専行し、使徒の生み出した「ディラックの海」に飲み込まれてしまいます。このディラックの海とは、使徒がA.T.フィールドを使って生み出した虚数空間で、恐らく別の宇宙につながっているとリツコは言っています。

結果的に、シンジの”ただ会いたかったんだ(みんなに)、もう一度”という生の欲動(リビドー)にユイが応え、初号機は暴走し、使徒を食い破ってディラック海から脱出できましたが、(この場面では「Mother is the first other(母は最初の他人)」というBGMが流れています。)

このディラックの海にいる間に、シンジはユイと繋がり、無意識化に抑圧していた記憶を少し取り戻しています。

シンジはディラックの海にいる間、内面世界の無意識の自分と会話し、無意識化の記憶にアクセスします。そして、自分が父親から捨てられたのではなく、自分から逃げ出したことを思い出します。また、記憶の中にある母親ユイは笑っており、マスメディアが報道しているように、ユイの死の原因が、父親によるものではなかったことを思い出します。

シンジは、自分がゲンドウを悪者にすることで、母が消えた事実から、自分が逃げていたことに気づきます。

このような記憶の改ざんは、シンジに限ったことではありません。人の記憶は曖昧なもので、時間が経てば経つほど、自身の都合の良いように歪曲される傾向にあります。特に耐えがたいトラウマによって、記憶が抑圧され、無意識化に押しやられているような場合はこの傾向が強くなります。フロイトはこれを「防衛忘却」と呼んでいます。自分を守るために記憶を忘れたり、改ざんしているのです。

このディラックの海で取り戻した記憶から、シンジは両親から愛されていたことを断片的に思い出し、自分に自信を持ち始めます。もちろん、これは、ゲンドウに褒められた時のような、外部から与えられた自信ではなく、自分で自分を認めることによる自信です。

これはシンジのシンクロ率低下からも見てとれます。

シンジが自立し始めたことで、母への依存が低くなり、シンクロ率が下がり始めていると考えられます。


リツコ:やはりそうだわ。シンジ君のシンクロ率が落ちてきている。

ミサト:どういう事?

リツコ:何とも言えないわ。ただ、先の事件のとき何かがあったんでしょうね、精神的なものが。


ここまでの使徒戦でも、ゲンドウが初号機を最優先にしていることが見て取れます。

第4使徒ラミエル戦では危険な盾役を零号機とレイに、第8使徒サンダルフォン戦では、火山の火口への潜航という危険な任務に、弐号機のアスカを就かせ、第11使徒イロウル戦では、使徒による侵食を回避するため、初号機を最優先で脱出させています。


ゲンドウ:パイロットを待つ必要はない。すぐ地上へ射出しろ。

シゲル・マコト:え?

ゲンドウ:初号機を最優先だ。そのために他の二機は破棄しても構わん。


使徒の側にも変化が起こっています。第11使徒イロウル、第12使徒レリエルは、これまでの使徒との間に明確な違いが見られました。それは、使徒が知恵を付け始めているということです。これまでの使徒は、単純な武力によって、ネルフ本部への到達を目指しましたが、イロウルはネルフ本部の中枢であるMAGIへのアクセスを試み、レリエルは、エヴァとパイロットを取り込みました。

委員会は使徒が人間の心に興味を持ち、コンタクトを取ろうとしたのではないかとミサトに質問しています。


ミサト:これまでのパターンから、使徒同士の組織的なつながりは否定されます。

委員:さよう。単独行動であることは明らかだ。これまではな。

ミサト:それは、どういうことなのでしょうか?

キール:君の質問は許されない。

キール:どう思うかね、碇君?

ゲンドウ:使徒は知恵を身につけ始めています。残された時間は、

キール:後わずか、と言うことか。


人がS²機関(生命の実)を求めるように、使徒もまた、知恵(知恵の実)を求めているという現れです。S²機関を持つ使徒が、知恵を付けるということは、神の存在に近づくということを意味します。そうなれば、人類はアダムベースの生物に敗北してしまうため、ゼーレとゲンドウは焦っているのだと考えられます。

AMBIVALENCE(双価性)

S²機関の実験の事故により、NERV第二支部、及び、エヴァ4号機と半径89キロ以内の関連研究施設が、数千の人間と共に消滅しています。

ゲンドウやゼーレの発言から、この事故はゼーレによる謀略ではなく、本当に事故であったようです。しかし、結果的に、ネルフはアメリカに製造コストを負担させた3号機を無償で手に入れることに成功します。


ゲンドウ:4号機と第2支部はいい。S2機関もサンプルは失ってもドイツにデータが残っている。

ゲンドウ:ここと初号機が残っていれば十分だ。

冬月:しかし、委員会は血相を変えていたぞ。

ゲンドウ:予定外の事故だからな。

冬月:ゼーレも、慌てて行動表を修正しているだろう。

ゲンドウ:死海文書にない事件も起こる。老人にはいい薬だよ。


フォースチルドレンには、トウジが選ばれました。理由は、3号機のコアがトウジの母親であったためです。(エヴァンゲリオン2のアルファシステム社の公式掲示板で、開発担当者は3号機のコアにはトウジの母親の魂があると名言。ゲーム内でもそのように扱われている。)

しかし、不運にもトウジを乗せたエヴァ3号機は、第13使徒「バルディエル」に寄生され、乗っ取られてしまいます。シンジはパイロットがトウジということは知らされてませんが、パイロットのことが気になるシンジは、使徒に寄生された3号機とは戦えず、ゲンドウの指示により、ダミーシステムに強制的に切り替えられてしまいます。使徒はせん滅できましたが、トウジは片足を失ってしまいます。(設定では、死ぬことになっていた。)

シンジはゲンドウに認めて欲しいという思いと、友人を殺すことを命じた父親を憎しむ思いという対極する感情に苦しみます。英語のサブタイトルは「AMBIVALENCE(双価性)」です。


マヤ:碇司令の判断がなければ、みんな死んでいたかもしれないのよ!

シンジ:そんなの関係ないって言ってるでしょう!

シンジ:父さんは、あいつは、トウジを、殺そうとしたんだ!この僕の手で!

シンジ:父さん!そこにいるんだろ!何か言ってよ、答えてよ!


ゲンドウに褒められたいという想いで、これまでエヴァに乗ってきたシンジでしたが、父ゲンドウの価値と衝突したことで、再び、エヴァに乗る目的を失います。このように、それまでモデルとすべき存在と思っていた父親や母親と衝突することは、この時期の子供には必要な「第2反抗期」であり、シンジが大人になるために必要なプロセスです。

この後、シンジはパイロットを辞退し、ネルフから出ていくとゲンドウに告げますが、そこには、サキエル戦で、オドオドしながら、ゲンドウの目を見て話せなかったシンジはいません。

今回のシンジは、他者や恐怖を回避するために、ネルフから逃げるのではありません。自分の考えや価値観の違いによって、父親から離れようとしているのであり、シンジは父離れを行っています。

ミサトはシンジを引き留めようとしますが、シンジが積極的に自分の意思を相手に主張していることに驚いています。


ミサト:それは分かってるわ…本部までのパスコードとあなたの部屋はそのままにしておくから。

シンジ:無駄ですよ、片付けておいてください。

シンジ:僕はもう、EVAには乗りません。

ミサト:積極的に話をしている…始めてね、こんなの…

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9 Thoughts to “【エヴァ】なぜ人類補完計画は破綻したのか?徹底考察”

  1. John Smith

    異議申し立てしたら動画戻るんじゃないですか?偽名義での攻撃なのでは

    1. unknown

      返信遅くなり、ごめんなさい。その可能性もありますね。
      次はしっかり武装して、消されたときは異議申し立てしたいと思いますw

  2. John Smith

    異議申し立てしたら動画戻ったりしないのですか?私はこの動画がとても好きでした。今削除されているのはとても残念です

  3. 日向

    以前、作成された動画を拝聴しとてもわかりやすかったので
    もう一度見たいなと思ったのですがYouTubeから削除されてしまったようです。
    もう一度youtubeにあげることが難しければ、ニコニコ動画に上げ直して頂いて
    リンクを修正して頂けないでしょうか?

    お忙しいところ、お手数おかけしますが素晴らしい動画だったので
    再び見れる事を楽しみにしています。

    1. unknown

      返信、遅くなりすみません。
      新しいエヴァ動画を作り直そうと思います。すこし時間がかかると思いますが、よろしければ、そちらを見てもらえると嬉しいです。

      1. mado

        新しいエヴァの動画、待ってます

        1. unknown

          ありがとうございます!

  4. aki

    サラさんは精神分析学を深く理解されているように、この考察を見ると思えますが、その道の勉強はやはり大学などでなさっているのでしょうか?それたまある程度は、独学でも行える範囲なのでしょうか?

    1. unknown

      私の大学での専攻は、経営管理でした。心理学は趣味で図書館の本を借りて勉強しています。
      私の知識は、ぜんぜん深くないですよ。心理学を勉強されている方が私の動画を見たら、ツッコミどころ満載と思いますw