【エヴァ】10章 アスカが他者に敵意を持つ理由(前編)

アスカが他者を攻撃する理由

アスカの幼少時代、アスカの父親の関心は不倫相手だけであり、アスカを「見てくれていた」のは、母親のキョウコだけでした。しかし、そのキョウコも接触実験で、アスカを愛する部分の魂がエヴァと融合してしまったため、エヴァの体外に残されたキョウコは、アスカを認識することができず、アスカをネグレクトし続けることになります。実際には、碇ユイがシンジを守るために初号機に残ったように、キョウコもアスカを守るために弐号機に残ったのですが、当時3歳であったアスカは、当然そのことを理解できず、なぜ母が自分に関心がなくなったのか、理解できません。

アスカ「止めてママ!ママを辞めるのは止めて!私、ママに好かれるいい子になる!だから、ママを辞めないで!だから私を見て!止めてママ!私を殺さないで!」
新世紀エヴァンゲリオンより引用

そのため、アスカは自分が「いい子」でないために、母親が自分への興味を失ってしまったと思い込んでしまいます。この経験が、アスカに「いい子」でなければならないという強迫観念を植え付け、14歳になってからも、アスカは「優秀」でなければならないと自分を追い込み続け、「普通であることの勇気」を持てないために、苦しむことになります。

キョウコがアスカをネグレクトしてからしばらく経ったころ、アスカはエヴァ弐号機のパイロットに選ばれます。アスカは「いい子」になった自分をキョウコに褒めてもらえると喜びます。そして、昔のように自分に興味を持ってくれるようになると期待し、歓喜しながら母のもとに走ります。

アスカ:ママーッ!ママッ!私、選ばれたの!人類を守る、エリートパイロットなのよ!世界一なのよ!
アスカ:誰にも秘密なの!でも、ママにだけ教えるわね!
アスカ:いろんな人が親切にしてくれるわ。だから、寂しくなんかないの!
アスカ:だから、パパがいなくっても大丈夫!さみしくなんかないわ!
アスカ:だから見て!私を見て!
アスカ:ねぇ、ママッ!
アスカ:…
新世紀エヴァンゲリオンより引用

しかし、そこでアスカは首を吊った母親の第一発見者になってしまいます。

アスカ「あの時、ママが天井からぶら下がってたの。その顔は、とても嬉しそうに見えたわ。」
新世紀エヴァンゲリオンより引用

自殺という最悪のネグレクトを受けたアスカは、母の拒絶と喪失を同時に経験し、もう母に甘えることができないことを悟ります。そして、そんなアスカを慰めてくれる大人は周囲にはいません。先に述べたように、アスカを「見ていてくれた」のは、母キョウコだけでした。実の父親もアスカには興味を示さず、アスカを愛してくれる人はいません。そのため、アスカは誰にも助けを求めず、早く一人で生きていけるように、早く大人になろうとします。

アスカ「泣いては駄目。一人で生きなきゃいけないの。大人になるの。」
新世紀エヴァンゲリオン2より引用

しかし、彼女の心を搔き立てているのは、前向きな意思ではありません。一人で生きるという表面上の決意とは裏腹に、少女の心は、「私を見てほしい」という欲求と「人に必要とされなければ、また捨てられてしまう」という、恐怖によって縛られています。

アスカ「人に認めてもらう。それが私の存在意義。それが私を突き動かすモノ。私を見てほしかったから。私を捨てないで欲しかったから。そして、私はみんなから期待されている。必要とされているのよ。」
新世紀エヴァンゲリオン2より引用

表面的には、自己中心的に見える彼女は、実際には、常に他者に縛られている状態であり、自己の中心には常に他者が存在し、アスカの心を乱し続けています。

このような心理状態であるため、アスカは他者と関わる上で、様々な適応上の問題を抱えています。シンジが「回避性パーソナリティ障害」の傾向性を示していたのに対し、アスカはB群(劇場型)の「境界性パーソナリティ障害」及び「自己愛性パーソナリティ障害」の傾向性を示しています。ここからは精神疾患の国際的な診断基準である、DSM-5を元に、アスカのパーソナリティ障害について見ていきたいと思います。

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