【エヴァ】3章 なぜ生きるのが辛いのか。欠けた心の原因

この”暴走”こそ、すでに人が、遺伝子に対して起こしたものと言えます。我々人類は、設計者である遺伝子のためではなく、自由に生きるために生きることを選らび、反乱を起こしたロボットと言えます。

知恵、つまり、自由意志を持たない使徒は、設計者である、アダムの意思に逆らうことはできません。ミツバチのように、自らの危険を顧みず、リリスを目指して突き進みます。一方、知恵の実を持つリリンは、設計者である綾波レイの魂やリリスに従順ではありません。むしろ、自分達の目的の為に、神を利用します。

ミサト「結局、神様の力まで道具として使っちゃうのね、人間って奴は。」

新世紀エヴァンゲリオンより引用

つまり、知恵の実が神になるために必要であるという理由は、神になるためには、自分を作った神の意思に逆らう「自由意志」が必要であるためです。

ではなぜ、自由意志があると、人は苦しむのでしょうか。ここからは、その理由について、説明します。

なぜ自由なのに辛いのか

人は知恵の実の能力によって、生物学的には大脳新皮質の拡大によって、遺伝子や本能に逆らい、自分の為に生きる選択ができるようになりました。しかし、歴史を見れば、皆が自由な人生を選べたわけではありません。身分制度や奴隷制度があった時代は、住む場所、労働の種類、結婚できる人にまで制限がありました。自由な意思を持っていても、選択ができなかったのです。また、近世以前は宗教が人の生き方そのものでした。信じる宗教に違いはあれ、生き方にはモデルがあり、そのモデルに従って生きていました。しかし、近代に入り、啓蒙思想、つまり、聖典の中に答えを求めずに、学問や論理を考えの中心に据えるようになると、聖典のモデル以外の生き方ができるようになりました。さらに、市民革命や平等主義によって、身分制度や奴隷制もなくなりました。いまだ差別は残っていますが、それでも、人ははるかに自由に生きることができるようになったのです。しかし、人は自由になればなるほど、自分の選択に対する責任が大きくなってきます。例えば、身分制度があった時代は、自分の経済力、教養、社会的信用といったステータスは、身分の問題でした。しかし、自分が自由に選択できる割合が増えてくると、自分の現状が、自分の選択の結果であると考える割合が大きくなってきます。つまり、自分は努力の結果、成功した、あるいは、失敗したと自己評価し、同時に、他者に対しても、あの人は努力しなかった結果、生活が苦しいのだから、自業自得だと、その人の困窮の原因をその人の選択に求めることが多くなります。こうした、自己責任の考えが大きくなればなるほど、人は他者に対して、手を差し伸べなくなり、人は孤独になります。また、生活が困窮しているわけでなくとも、正しい選択ができているか確証は得られないため、「自分はこの人生でよいのだろうか。本当にやりたいことがあるのではないか」と自分の選択に思い悩み、「今のままで、大丈夫だろうか。後で後悔しないだろうか」と不安を抱えることになります。

ミツバチであれば、この様な悩みを抱えることはありません。自分は本当に働きバチでよいのか、本当は、女王アリとして生きる道や、あるいは、一人で花の蜜を吸いながら生きていく道もあるのではないかと思い悩むことはありません。無心で本能に従い、働き続けるだけで一生が終わります。この人だけが背負う苦悩を指し、実存主義哲学者サルトルは「人は自由の刑に処せられている」という言葉を残しています。人は自由を求めますが、自由は孤独や不安を生むためです。元々、リリスの中で一つだったリリンは、リリスより生まれ出てから、自由を求めて、個の最大化を目指してきたわけですが、それは同時に、孤独の最大化でもあったわけです。

以上が人が自由意志を持ったがゆえに、人が苦しんでいる理由です。

最後に

この章で見てきたように、リリンは知恵の実の力によって、使徒に対抗する力や神になる力を手に入れましたが、同時に、原罪を抱え、苦しむことになりました。そして、この苦しみを克服するため、原罪を贖罪するために、ゼーレは人類補完計画を目指すことになります。つまり、設計者がリリンを生み出した手順を巻き戻し、神と一つになり、他者と溶け合い、心地よい、孤独や不安のない世界で永遠に生きることを望みました。

しかし、碇ユイは人の生きる強さを信じて、これに抗い、息子である碇シンジも、他者のいる世界を望み、孤独と不安のある世界で生きていくことを選ぶことになります。

冬月「人は生きていこうとする所にその存在がある。

それが自らEVAに残った彼女の願いだからな。」

新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君により引用

今回も、心理学、生物学、哲学などの知識が登場しましたが、いつものことながら、間違いも多いと思いますので、コメント欄でお教えいただければ嬉しいです。

マニアックな内容が続きますが、お付き合いしていただいている皆さま、ありがとうございます。コメントをいただいている方にも感謝です。とても励みになります。

本章までで、エヴァの前情報についての考察が終わりましたので、次章からは、いよいよ本編の内容に入り、セカンドインパクトについて考察します。

ではまた次章でお会いしましょう。

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