【エヴァ】9章 碇シンジはなぜ他者を回避するのか

碇シンジはなぜ他者を回避するのか

認識できていません。心理学の研究でも、人は忘れてしまった記憶であっても、脳内にはそのほとんどが保存されており、取り出せないだけだと考えられています。

シンジは母親を覚えてはいないものの、無意識下では、母を覚えており、母を愛し、母を求めています。そして、その母親の夫である父親をライバル視していますが、同時に、父に認められたい。父に愛されたい。という、矛盾した感情を持っています。

このシンジの心境は、フロイトの精神分析学で、エディプスコンプレックスとされているものです。男子が始めに性愛の対象とするのは母親であり、男子は母親を独占し、自分の物にしようとしますが、父親がそれを阻みます。父親は母親を奪った敵ですが、同時に、その母親を手に入れた憧れの対象でもあります。フロイトによれば、男子はエディプスコンプレックスによって、世の中は自分が思い通りにならないことがあると知り、自分を律することができるようになるとされています。この自己を律する別の自己を「超自我」と呼びますが、この超自我は父親をモデルとして作られるとされています。そして、自己はこの自分を律する超自我と本能そのものであるエスとの間で葛藤することになるとされています。そのため、この超自我は人が大人になるために不可欠なものであり、同時に、人の葛藤や苦しみを生み出す原因でもあります。シンジの14歳という年齢は、それまで抑圧されていたエディプスコンプレックスが表面化する時期でもあります。そして、エヴァの物語の中で、シンジは父親と母親から精神的に卒業し、大人へと成長していきます。

フロイトの精神分析学やエディプスコンプレックスは心理学に大きな影響を与え、カウンセリングといえば、精神分析という時期もありました。しかし、現代の心理学や臨床的な現場で、精神分析が用いられることは多くはありません。ここからは、シンジのより現実的な分析のため、精神疾患の国際的な診断基準である、DSM-5を元に、シンジのパーソナリティを見ていきたいと思います。

回避性パーソナリティ障害

パーソナリティ障害は、大きくA群(奇異型)、B群(劇場型)、C群(不安型)に分類できますが、レイは奇異型、アスカは劇場型、シンジは不安型に分けられると考えられます。特に、綾波レイはA群のスキゾイド、アスカはB群の境界性及び自己愛性、シンジはC群の回避性パーソナリティ障害の特徴が示されています。

余談ですが、庵野氏は自身の二冊の対談本にパラノ、スキゾとパーソナリティ障害のA群の名前を用いています。

後の章で、レイやアスカのパーソナリティについても紹介しますが、この章ではシンジの「回避性パーソナリティ障害」について、確認します。回避性パーソナリティ障害を持つヒトは、他者に評価されることを恐れ、恥をかいたり、怒られたりする可能性がある体験を極端に避けようとします。そして、他者の表情や行動を注意深く観察し、

自分に罰を与えない人や甘えさせてくれる人とだけ付き合うようになり、交友関係は限られたものになります。しかし、一方で、周囲から認められたい、評価されたいという気持ちも人一倍強く持っています。そのため、孤独に満足することは少なく、対人関係で傷つきやすいパーソナリティを持ちます。

DSM-5では、回避性パーソナリティ障害の診断基準として7つの基準が示されています。

基準1:「批判、非難、または拒絶に対する恐怖のために、重要な対人接触のある職業的活動を避ける」

(1) 批判、非難、または拒絶に対する恐怖のために、重要な対人接触のある職業的活動を避ける
「DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル」より引用
編集:American Psychiatric Association
出版社:医学書院

このタイプの人は、職場でも昇進や昇給を断ることがあります。管理職になれば、対人関係が増え、責任が増えることが想定されるためです。また、失敗したときに自分が責められてしまうリスクを避けるため、新しいことに取り組む場合は、人に命令されたり、後押しされることで行動します。

シンジ「先生に言われて始めた事だし、すぐやめてもよかったんだ。」
アスカ「じゃあ、なんで続けてたのよ。」
シンジ「誰もやめろ、って言わなかったから…」
アスカ「やっぱりね…」
新世紀エヴァンゲリオンより引用

序盤のシンジも、自分でエヴァに乗るか乗らないかを決めることはできていません。シンジがエヴァに乗ったのは、ゲンドウに見捨てられたくないためであり、怪我をしているレイや、

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